​メガネに最適なチタン素材の開発
​そして、ラインアート シャルマン発売へ

 「チタン」といっても様々な種類があるが、鋼鉄以上の強度を持ちながら、質量は55%と軽く、アルミの2倍の強度があるため金属疲労に強い金属である。また、酸などに対する耐食性に優れているため、航空機や潜水艦にも使われる金属である。

 そんな大げさな金属がメガネに?と思うが、人体にとっては、人工関節にも使われるほど、「金属アレルギー」を起こさない素材なのである。しかし、軽くて、強靭でしなやか、柔軟性に富んではいるものの、目指す「掛け心地」の満足を持続させるための「形状記憶」の性質はそれまでのチタン材にはなかった。

 メガネに最適な「形状記憶」チタン材の自社開発がはじまった。開発担当の社員をアメリカの大学に2年間通わせてまでの挑戦であったが、叶わなかった。

 そんな折、東北大学金属材料研究所が新たな超弾性合金の開発を進めているという情報が飛び込んだ。

 すぐにシャルマンの開発担当者を派遣して、共同研究がはじまった。そして、世界初のニッケルフリーの形状記憶チタン合金「エクセレンスチタン」の開発に成功した。研究をはじめ足かけ8年、2009(平成21)年のことであった。

 新素材の開発と時を同じくして、新たな溶接技術の開発もはじまった。

 従来のメガネは、いくらスポットロウ付けをしたとしても、溶接個所には熱の影響が残る。

 繊細なメガネにとって、これまでの接合技術では、美しさの表現に限界があったし、何より同時進行で開発中の新素材の接合にも支障をきたすのであった。

 そこで、福井県が進める産・学・官の連携事業に賛同をして、ふくい産業支援センターと大阪大学と共同で、レーザ溶接技術(レーザ光線により、接合させる部材を溶かしてくっつける)の開発がスタートする。

 ここにも専門の技術系の社員を派遣し、およそ5年の歳月をかけて、レーザによる微細接合技術の開発に成功した。

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 この技術が生まれなくては、エクセレンスチタンの性能が十分に発揮されることがなかったかもしれない。

 そもそもチタンは、溶接することが厄介な金属で、溶接時の加熱により、材料が大気中の酸素や窒素、水素と反応し、溶接部が脆化する問題があった。しかし、開発した新たな技術を使えば、今までにない形状やデザインをメガネに織り込むことが出来るのだ。

 ただ、ここまでの研究開発にかける時間、労力、資金もスゴイが、シャルマンのすごさは、これら技術と知識を最大限に発揮し、目指すメガネをつくるということだ。

 つまり、世の中にないものを手に入れたわけであるから、そこからモノをつくり出すということは、メガネを製造する機械を一からつくることが必要だ。ただ、つくるためには、素材の特性や様々なデータが必要であり、品質を担保する試作やテストが繰り返されて初めて、製造機械が出来るのだ。

 シャルマンの代表シリーズであり、2019年に発売10周年を迎えた、人気の「ラインアート シャルマン」シリーズ(下部:女性用)のラインナップ。このシリーズのテンプルに見られるように、細いエクセレンスチタンの組み合わせによる立体的(3D)なデザインは、これまでの金属や樹脂では、強度面からも叶えられなかったものだ。その斬新なデザインは、開発された新素材と新技術によってそれを可能にしたのだ。もちろんそこには、シャルマンの一丁目一番地の哲学「掛け心地」を最重視して、デザインが起こされた。

その掛け心地をいえば、棒や板状のテンプルでは、その素材の弾性に委ねることになるが、こうした立体構造にすることによって、材料だけでは補えない、しなやかさ、やわらかさを持たせる

ことが出来るのだ。

  未知の素材をシャルマンが目指す製品に落とし込む。先の製造機械の開発と同様に、デザインと強度・構造設計とのバランスを計りながら素材特性を最大限に生かす商品開発がはじまった。

 さらに、美術・工芸品をつくるわけではないから、生産ラインの構築や、そのためのノウハウを合体させ、数をつくらなくては、すべてが「宝の持ち腐れ」となってしまう。

 その結果、機能を持ったデザイン、が完成した。これがシャルマンのメガネであり、真の技術力であった。そしてその力は、更なる分野へ発展していくこととなった。

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2009年に発売されたラインアート シャルマン第一号、XL1000。繊細なエクセレンスチタンのワイヤーを複数のアーチで組み合わせ、かつてない掛け心地で多くの方々を魅了している。

「ラインアート シャルマン」シリーズ(レディース)のテンプルデザイン

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鯖江のメガネづくりの分業体制は 金型→部品→組立→研磨→表面処理→仕上 と分けられている。もちろん一工程1社ではなく、多くの部品によって出来るメガネだから、その種類だけの工程が必要となる。自社工場で一貫生産するシャルマンは、これら200工程以上といわれる作業を全て行っている。地場の分業体制と最も違うことは、各工程ごとにしっかりと検品が行われ、問題があれば工程をさかのぼり、あるいは、他のロットも調べるという徹底ぶりである。それもあり、製造ラインこそ省人化されているが、とにかく製品に関わる人の数は多い。 しかし、こうであってこそ「品質」が保てるのだ

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レーザ微細接合を行う機械